ピッチェリとクリスパの見分け方

このテーマで記事を書くについて、前もって幾つかの注意事項を申し上げさせて下さい。

まず、種の特徴については主にwebを検索して情報を得ました。
出典の各siteは読まれた方が参照できるよう、文末に記しております。

出典元は、米政府の公的機関だったり、財団法人だったり、大学等の研究機関等のほか、
民間のフォーラムや植物園、ナーサリーから個人の園芸栽培家まであります。
ただし、記述の根拠として信頼に足るものでなければ意味がありませんので、
公的機関などオーソライズされたものを主にするようこころがけましたが、
その記述の信憑性について保証するものではありません。

種の特徴について、出典先によって記述が違うということも稀にありました。
細かい検証はしておりません。地域差があることもあると思います。


何度かに分けての連載形式になると思いますが、よろしくお付き合いください。

内容はおおよそ以下の区分で進めていこうと思っています。

1、 クリスパとピッチェリの見分け方
2、 栽培場で起こる交雑の可能性
3、 交雑種と思われる個体あれこれ



ではまず初めに、やはりその見分け方のいくつかについて早速述べていきましょう。

我々が苗を購入する時、北米の自生地から野生のものを手に入れることは極めて難しいのが実状です。
ピッチェリもクリスパも増殖は殆ど実生に依っていますので、
まず100%栽培品と思って間違いありません。
しかし代を継いでの日本国内産なのか、新しく外国産のタネを日本で撒いて育てたのかは
全く判らない状態で流通しています。
勿論最初は現地植物を(恐らくタネで)日本に持ち込んだのは間違いないのですけれど・・・。

後に詳述しますが、純粋原種であるかどうかが疑わしい個体も含まれると考えておいてください。
それでもそれぞれの種の特徴がよく出ているものを知れば、見分けることができるようになります。
 
 クリスパの花の最大の特徴は、花弁(正確にはがく片)が他のどの壺型よりも大きく反転することです。
名の由来となったcrispには何通りかの訳がありますが、細かくカールした、とか波立った、
などの意味に解釈すると、花弁の反転の印象から来ているようです。

 ですがそれよりクリスパは、現地名の方がさらに自生の様子を窺わせるので興味を覚えます。
即ち、現地ではクリスパは、Marsh clematis, curly clematis, blue-jasmine等と呼ばれています。
Marshは沼のことです。つまり「沼地のクレマチス」という通称なのです。
他の2つはカールしたクレマチスとか、青い(青紫の)…ジャスミ芳香があることを示しています…
等と呼んでいるようです。

「沼地のクレマチス」、これこそがクリスパの最も着目すべき特徴であり、性質なのです。

USDAでClematis crispaを検索すると、分布域の地図が出ます。北はイリノイ州、東はノースカロライナ、
西はテキサス、南はフロリダまで。
一方ピッチェリは、分布域を図面で見る限りは東方面を除き、クリスパとかなり重なっています。
ただしそれは地図を水平的に見ているからで、垂直的に見ると、
つまり高度分布ではピッチェリとクリスパははっきりと棲み分けているのです。

American Bells によればピッチェリは、(高度のある)森林地帯で石灰岩質の乾燥した環境に
自生していると書かれています。

片や沼地、片や山岳地帯。
不思議なことにどちらにも耐暑性・耐寒性があり、日本においては年中露地栽培が可能ですが、
本来の自生地では高温多湿のクリスパと冷涼乾燥のピッチェリなのです。


 花だけでなく、春の芽出しの頃に気づかれると思いますが、クリスパの方が明らかに芽の伸長が早く、
ピッチェリはかなり遅いのでこれも判別する手掛かりのひとつです。

葉は特徴がつかみにくく双方の違いを的確に言い当てることができません。
Flora of North America ではピッチェリの葉には明瞭な網目模様があって、
それをもってreticulata に非常に近い種類だと書いています。

前出American Bells はversicolor に近縁だが、versicolorより網目模様が明瞭だと言っています。
ですが私が栽培している範囲では、葉だけを見てこれはピッチェリだと断定する自信はありません。


クリスパとピッチェリ、またその近縁の北米原種の壺型クレマチスは
自生地でさえ個体変異がさまざまにあるようで、
特にピッチェリの花色の変異について多くの研究者が指摘しています。
花色だけで判断するのは根拠として弱いと考えてください。


 さらに混乱させる話かも知れませんが、避けて通れないので一応指摘をしておきます。
我々が苗を入手する時、それがクリスパとかピッチェリとかはその苗についている
ラベルを信じるしかありません。
もし、生産者が間違えたり、販売者に知識がなかったりすれば、
間違ったものを買ってしまっているかもしれません。普通それを疑ったりしませんけど。

ですがその結果、品種が違うことに気づかぬまま何年も栽培し、播種し、実生を育てていることが
あるかもしれません。
また、自分自身が鉢上げや植替えの時にラベルを取り違えることも皆無とは言えません。


話は脱線しますが、pitcheri の日本語表記についてちょっとふれておきます。
私は「ピッチェリ」と呼んでいますが、「ピッチャリ」とか「ピッチュライ」とか呼ぶ方もいらっしゃいます。
どれが正しいかをついつい決めたくなりますが、調べてみると事は簡単ではありませんでした。

名前の由来は人名で、Zina Pitcher ジーナ・ピッチャーと読むのでしょうか。(男性です。)
1797年生まれ1872年没、アメリカの薬学者で教育者で政治家でした。
デトロイトの市長を務めた人でもありました。
彼に因んで名づけられた植物はクレマチス以外にもアザミの仲間やセージの仲間などがあります。

さてその読みですがピッチャーにそれに因むの意の“ i ”がついているので、
「ピッチャリ」と呼んでも間違っているとは言えないようです。(日本語としては不自然ですが…)

この学名をどのように発音するか(発音記号ではなく)既存の単語をつないで表記したサイトを
見つけました。
そこにはPIT-chur-eye とあり、そのまま読めばピッチュrアイ」です。
「ピッチュライ」と読めるではありませんか。


ホントかな?と思われる方、確かめるには、以下のURLへ
http://museum.utep.edu/chih/gardens/plants/clematispitcheri.htm
うまくいけない場合は、
メニューのなかのDesert Gardens ⇒Chihuahuan Desert Plants ⇒
その中のplant-list pages のリンクからCの項目のclematis pitcheriを開きます。

エル・パソ訛りと言う訳ではないでしょうが・・・。「ピッチュライ」もあり、なんですね!



次回は好むと好まざるとに拘わらずの、交雑という厄介な話をしなければなりません。
ちょっと気が重いですけど…。





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